『えー……次に、傷害事件です。昨夜未明、北区でバスジャック事件が起こりました』


ヒビの入った画面の中で、鮮明に、綺麗な声で話すアナウンサーは、淡々とニュースを読み上げた。


『犯人は、5〜6人の少年グループと見られており、乗客14名の内13名を殺害。現在、人質を1人連れ逃走中です』



「またこんな事件かよ」


葵がボソッと呟く。
近い距離にいたので聞こえないはずもなく、小女も最近多いよね、と小さな声で言った。


近年、未成年の犯罪が増えたのは言うまでもない。それとは逆に、大人の犯罪はめっきり減ってしまったのだ。


「北区でまだ逃走中ってことは、もしかしたら案外近くにいるかもね?この都市を出るには許可がないとダメだし」


「まーな……でもバカみたいに広いからなぁ、ここ。うまくいけば逃げ切れるかもな」


こんな風に笑い混じりに話しているが、相手は13人も人を殺しているのだ。だが、現実味が沸かなかった。どこか遠い国の出来事のような……。


『ここで、犯人グループが逃走中のナンバーを発表します。発見した際には無理な行動をせず、直ちに警察隊に連絡を――』


[ み 7―564 ]


アナウンサーはこう告げた。


「み 7―564……"ミナゴロシ"だねーっ」

「……」

予想通りというべきか……小女がそんなよろしくないゴロ合わせをきゃっきゃと楽しそうに言う。

「見つけたらお金とか貰えるのかな?」

「お前な……」

金持ちのくせに何言ってんだ。



そんな会話をしていると、ニュース画面から、アナウンサーの焦った声が聞こえてきた。




『ここで臨時ニュースをお伝えします』