「でねでね、葵の携帯ってかなりの旧式でしょ?」


「悪かったな……」


「そうなんだよ。今の時代、中居君の携帯だってカメラくらいついてるよ?
だから、そんな葵のプリミティブな携帯ちゃんにサービス付けてみましたぁー」


「……サービス?……っあ」


携帯に見知らぬボタンが増えてる……コイツ、一体何しやがったんだ……?


「そのボタンを押してみてくれたまえーっ」


「大丈夫なんだろうな……?……っと」


葵は言われるがままに、そのボタンを押した。



ザザッ

『……ん……ちわ……お昼……ース……す』



「っわ!なんだコレ」


ボタンを押すと、待ち受け画面がテレビの砂嵐のようになり、雑音が混じった音声が聞こえた。


「はいっアンテナ立てて!」


「アンテナ?そんなもん……付いてるし……」


俺の携帯には見知らぬボタンに続いて、見知らぬアンテナまで内蔵されていた。


なんでもアリだな……コイツは。



『こんにちは。紅葉賀学園都市、お昼のニュースです』





「おぉっ!なんだこりゃ」


「わーい、成功!ふふ、ワンセグ機能だよーん!」



「ワンセグ……」


「初めてだったんだけどね、ちゃんと映った映ったー!私からのささやかなプレゼントだよっ」


カメラ機能とムービー機能をすっ飛ばしてワンセグ機能って……
なんか、微生物から猿の過程を無視していきなり人間になっちゃった……みたいな。

小女があんまりにも嬉しそうに笑うので、俺は怒ることもできなかった。……いや、むしろ感謝した。



「まぁ……ありがと?」


「どーいたしまして!
ささっニュース見ようよニュース。私ニュースって大好き!」



言われるがままに葵は小女と携帯の画面に目を移した。