「ふぁ……ねみ」


あれから、午後の授業を放棄して、葵と小女の2人は寮までの道を散歩していた。

大きな花壇の前に差し掛かった時、葵がふと思い出したように言う。


「あぁ、そういえば小女」


「なぁに?」


「これ、壊れちゃったんだけど直せるか?」


「うん?どれどれ……」



葵は、さっきの喧嘩で壊れた携帯をポケットから取り出し、小女に渡す。



「ふんふん……画面破損に、えっとぉ……うん、これくらいなら直せるかな」


そう言って小女は背負っていたショルダーバッグからドライバーセットなどの工具を取り出してカチャカチャといじり始めた。


ちなみに……さっきの件で、俺の携帯は開いた状態でおもいっきり踏み潰された。

壊れ具合はというと、まず画面が割れ、ボタンがいくつか外れて、しかも上半部と下半部が真ん中からパックリ半分わけになっている。


普通ならもう使えない。
でも、小女は「直せる」と言った。


なら、大丈夫。




「……うん、よし。できたよ」


数分十分後、小女が得意げに直した携帯を俺に差し出して来た。


「まじで直したのかよ……」


「まあね――でも、画面は割れが目立たない程度に繋いだだけだし、ボタンもいくつか無かったから、私のお手製だよ、どう?」


葵は携帯をよく見る。


すげぇ、コレ……確かによーく見ると割れ目は認識できるけど、使うには気にならないくらい綺麗に画面は修復されてるし、ボタンもそっくりそのまま、離れていた上半部と下半部も綺麗に接合されている。



「毎回思うけどお前って……ホントすごいな……」


「えへへー。」



機械技師[エンジニア]

賢木小女の持つ、最弱以外の、もうひとつの称号。