彼は立ち上がりこちらに近づいて来る。そして適度な距離で立ち止まり、申し訳なさそうな表情を浮かべ


「さっきは、すみません」


と、頭を下げた。
彼はどうして謝罪して来たのか?それはすぐわかる。三連ピアスが俺に対して起こした行動を、詫びているのだ。


「洵が失礼なことしてしまって……本当にすみません」


「い、いやこちらこそ……俺も、彼の、その……耳を」


俺は少年から目を逸らし、カレーの皿に目を落とす。ちらりとも、三連ピアスの方に目は向けられなかった。


「ああ、あれはしょうがないですよ。自業自得。禅……あ、アイツの名前なんですけど……禅が悪いです。昔からああなんですよ、アイツは。あなたは間違ってませんよ。あなたが謝る必要は全くありません」


そう言って三連ピアスに目配せしながら、冷笑的に笑う彼。

また、彼の言動から察するに、三連ピアスとは仲が良いらしく、また、旧知の仲であることも分かった。


友達を傷つけられて……まあ、あちらが悪いにせよ、こうして代わりにも謝って……本当にできた人だなぁ。などと再び感動にも似た気持ちを抱いていると、突然何らかの違和感を感じた。


「……?……あれ?」

「どうかしましたか?」


……?おかしい。
なんだろう、これは。

既視感ような、不思議な気持ち。

「いや……俺ら、前にも」


会ったことあるっけ?と続けただが、それは叶わなかった。
俺の言葉は、低い叫び声に掻き消されてしまったのだ。


「いたぞ、ガキだ!!」


入り口のドアが蹴り破られ、外から小さな銃を構えた大きな人が3、4人入って来た。

いずれも、国から支給されたであろう拳銃と迷彩柄の軍事服のようなものに身を包んでいる。