「ふぁいふぉ……」



我ながらなんとも間抜けな声が出た。つーか、こんなんじゃまともに喋れねぇ。


ナイフを……無くさなきゃ。


少しだけ頭を反るようにして出来るだけ反動を付けて、勢いと顎の力を存分に使って――


「う、おら゙っ!!」


    、、、、、
刃物を、噛み砕いた。


「なぁっ!?」


バキンッと音がして、砕けた先のほうが口の中に落ちてきた。


「うえ゙っ!げほっ……まっず」


小さな破片も飲み込まないように注意を払い、床に吐き出し、それから俺の上に乗っかり、呆然としているヤツのピアスのひとつを思い切り掴んだ。



「俺の上から今すぐどけろ。耳、引き千切られてぇか」


ピアスを握る強さをどんどん強くしていくと、その耳の持ち主はどんどん恐怖に顔を歪めていく。


「よーし。わかった。カウントだ。
さーん、にーい、いー……」


「わ、わかった!わかったから離してく」





ブ、チィッ






「う……あ……あぁぁあ゙ぁっ!!!!」




肉の裂ける音が俺の耳に届くと同時に、新鮮な血と僅かの肉片が自分の顔に飛び散る、気持ち悪さを感じた。


「っあぁぁぁあ゙……!」


右手には、大きな血まみれのピアスが握られていた。



「うぁ゙……ってっめ……」


「……まだそんな口聞くか」



「葵!」


もう1つのピアスに手を伸ばそうとした時、その声で我に返った。


振り向くと、そこには


「ストップストップ」


「おと…………」


「もうやめなよ、ね。こっちおいで?」


「…………」



俺は耳を押さえながら呻いているヤツを蹴り飛ばして立ち上がり、小女の側へと足を運んだ。


「よしよし、よくできました」


笑顔の小女が背伸びして俺の頭をぐりぐり撫でて、それから三連ピアスから二連ピアスになったそいつの側まで行ってしゃがみ込み、肉が欠けたその耳に何か囁いた。




「わかったでしょう?"最強"に刃向かうと、こういうことになる」






次は、耳が無くなるくらいじゃ済まないよ。