瞬間、背後に視線をやる。
小女はその場からエスケープしていた。

少し薄情な気もするが、今はナイスな判断だ、小女!


傍観者達がざわつき始める。


「……!っと」



刹那だった。

アーミーナイフから顔を出した鋭い刃物が俺の目を狙う。

それを首を捻る動作で交わすと三連ピアスは空中を切り裂くことになり、バランスを崩すが、場慣れしているのだろうか、すぐに体制を建て直し、次はナイフを引っ込め、ドライバーを出した。


「ハッ。避けるだけかよ!」


次もまた、ドライバーは俺の眼球を狙う。


「……るっせーな」


コイツ攻撃がワンパターン過ぎる。正直というか真っ直ぐというか……。

まったく――――だ。


俺はしゃがみ込みその攻撃を交わし、今度は掌拳を三連ピアスの腹にぶちこんだ。


「……がっ」


三連ピアスは一瞬顔を歪めるが、口元は笑っていた。


――わざとか……?!


三連ピアスは、またもや、まってましたの表情を浮かべ、そう気付いた時には次の攻撃を開始していた。

やはりわざと攻撃を受けたようだ。……俺を捕える為に!


「う、おあっ」


胸ぐらを捕まれた俺は三連ピアスの腕力と重力により、床に叩き付けらる。


「はははははははははっ!」


仰向けに倒れた俺の上に馬乗りになり、ドライバーをひっこめ、先ほどよりは少し小振りな刃物を出し、それを口の中に突っ込んできた。


「うごご……」


あと三センチ……いや、一センチ奥に突っ込まれれば喉がやられる……。

ふいに、小さいころ歯ブラシを奥に突っ込みすぎて中のものを飲み込んだ記憶が蘇った。


三連ピアスは笑みを浮かべて言う。



「もう一度だけ聞く。
お前は本当に"最強"か?」