「"最強"の、柏木葵だな?」


そう言った[ヤツ]はギラギラの金に染め上げた髪を立ていて、いかにもな感じがする。
そして印象的なのは耳に付いている三連ピアス。


アクセサリーを確認するとブレスレットをしている。パーカーにスウェットというラフな格好だ。
動きやすそうだな、と思いながらも俺は視線をそのまま三連ピアスに向け続ける。


「そうだけど?」


「しかも隣にいるちっこいのは、誰かと思えば"最弱"じゃないか?」


今度は、その鋭い視線が小女に向けられる。


「……」


小女は応えない。
いつもの表情で三連ピアスを見つめていた。


すると、三連ピアスはスニーカーを鳴らし、こちらへ近づいてきた。

周りにいたヤツらも、緊張気味に俺たちを見つめ続ける。


三連ピアスは2メートル先まで来て歩みをピタリと止め、俺の頭から爪先まで一瞥し、やがて自分の代名詞である三連ピアスに手を触れながら呟く。


「これが"最強"ねえ……」


俺は小女を自分の背後に左手で追いやり、そして不機嫌を装った。


「……なんだよ。俺今別にドンパチするつもりねーんだけど」

「お前本当に"最強"か?」


三連ピアスは訝しげな表情を浮かべ、そう訪ねてくる。


「最強じゃねーよ。周りが勝手にそう言ってるだけだろ」

「嫌味に聞こえるぜ」

「そう聞こえるように言ってんだよ」


腹の虫は俺のなかでのた打ち回っていた。ああ、腹が減った。よく考えたら昨日の昼からなにも食ってない。

三連ピアスの挑発的な態度と、人間の三大欲求のひとつが空っぽで、だんだん腹が立ってきた。

ああ、イライラする。


「もう一度聞く。お前本当に最強か?」


しつけぇな。殺すぞ。


「だったらな、試してみろよ」


と、言った途端に三連ピアスがまってましたと言わんばかりに飛び掛かって来た。その手にはアーミーナイフ。