廊下のつきあたりまで走り、そこから下へと続く階段を駆け降りる。


そしてすぐに右に曲がると、[食堂]の看板が天井からぶらさがっているのが見えた。


「腹減ったあ」


やっと着いた!食堂へ続くドアのノブを捻ろうとしたその時、ピタリと手が止まった。


「誰かいる……」


ドアに付いている窓から中を覗くと、またもや人影がぽつぽつと見えた。数は、4、5人といったところだろう。今度は倒れたりはしていない。各テーブルに一人一人座っていたり、食券機の前でポケットから小銭を探す者もいた。


一旦窓から手を離し、隣で背伸び気味な小女に問い掛ける。


「生徒、だよな」

「生徒、だね」

「ということは子供、だよな」

「そうだね。子供、だね」


大人でないだけいいが、子供もまずい場合がある。俺のことを"最強"だと言って絡んでくる輩かもしれない。


まあケンカを売られたら買うだけだし、小女のほうも……まあ、コイツはうまく隠れるだろう。


「どうする?入る?」


「うーん」


できるだけ無駄な体力使いたくない。というのもあるが、第一に小女の前でケンカはしたくない。

そんなことを考えていると、ついに腹の虫が音をあげた。


「あいつらはただの普通の子供で、ただこの食堂に身を潜めていた。……よし、この設定でいこう」


「私、カレー食べたい」


朝からかよ。と突っ込みを入れつつ、俺はノブを捻った。



ギィィー……


鈍い音がして、思わず首を窄めた。



一斉に、全員の視線が俺と小女に集まる。



「よお」


右手を上げて一言挨拶してみた。



すると、一人の男が席から立ち上がり、鋭い視線を俺目がけて飛ばし、口元を緩ませ、一言。



「お前、もしかして"最強"の柏木……」




ああ、サイアクだ。