「しっかしなぁー」


学区内をうろついていたため、寮にはさほど時間は要しなかった。
で。

現在、紅葉賀学園の高等部生徒寮、ちなみに男子館。
さらに言うと、館長である葵の部屋である。





「どうしたもんかなー」


「どうすることもないよ」


「冷たいなお前……」


「どうすることもないニャンッ」


「……なにそれ」


「新しいキャラづくり」


「……」



小女は、相変わらずこの調子で…………


ふたりは、恐ろしいほど落ち着いていた。


俺の部屋でコーヒーを啜り、テレビをつけて、葵は床に座り小女はベッドに寝転んでいる。


どこのチャンネルを回しても……『massacre』『massacre』『massacre』……この話題ばかり。
中には、これを否定する評論家なんかもいて、なんだか可笑しかった。


『無駄だと思うんですよね、私は。こんなことをしてデモでも起こったらどうするんです』


頭を白くして、銀縁の大きな眼鏡をかけて熱く語る評論家。
周りにいるゲストやアナウンサーたちが必死に宥めていた。


「はは……」



葵は、自嘲的に笑ってベッドに寝転ぶ小女に目をやった。


ああ、今日も、紺色の、綺麗な長い髪。



「ねー葵ー」


「んー」


「私を守ってね」


「……守るよ」


「ふふ、ありがとー」



小女の、笑顔。

あぁ、やっぱり人形みたいだなぁと思った。