「まさか」
葵の口から零れたのは、そんな言葉だった。
『massacre』の施行は三日後――
内容は、大人が子供を殺すこと。それ以外は告げられていなかった。銃器なのか、刃物なのか、そもそも大人が直接殺しにくるのか。それとも捕獲してから別の場所に拉致され、殺されるのか。
考えれば考えるほど、想像は無限に広がっていく。
『繰り返しお伝えし』
アナウンサーが言い終える前に葵は携帯を閉じた。
「人は、本当に大切なことは一度脳に入ると忘れないんだ」
と、自分に言い聞かせる。
「私ももう見たくないと思ってたところ」
小女は、本当にうんざりした表情でそう言い放った。
「よーし。んじゃ、寮に帰ろうぜ。俺眠くなってきた」
「そうだね、葵の部屋におじゃまさせてもらうとするよ」
二人は、寮への道を歩き始めた。