「お義母さんが、

 僕を散歩に誘ったときのこと、

 覚えていますか?」






そらは瞬きで返事をした。



「酷く医者との結婚に不信感を抱いてらした。
 

 その時、不信感の一部を僕に

 打ち明けて下さった。

 

ただ医者と不倫をしたことが
  
 あるとだけ・・・。

 

名前は伏せていました・・・
 
 なので、僕も、

 牧田さんがあの名前を口にしたとき

 ハッとしました。
 
 

この人か・・・と

 そして、

 そらは妙な箱を見つけたというでは
               ないですか。
 
 


僕もやっぱり鋭いところがありますから

 その中身が何に関係するか、

 大体の予想がつきました」








「でも淳一郎は、私にその箱の中身のこと、

 隠さなかった・・」







「はい、その場凌ぎで隠すことはできました。

 実はお義母さんには変な趣味があって、

 それを隠している・・・・。
 






 実は僕たちへのへそくりがあの中にあった・・・

 なんてくだらないもの

 いろいろ答えられました。
 

 
でも、牧田さんがそらに向かって

 “はなこ”と言ってしまっているんです。

 

 どうせ、夫人だって君を見て
 
 黙っていないと思いましたからね。
 
 

 もう隠しようがなくなったんです。

 だから僕は、勝手にも思うままを話しました」







ということは・・・私だけ何も知らずにいた?







「そのこと・・・父は、知ってるのかな」


「ご存じですね」
淳一郎はパシッと言った。