「いいですか?

 そら




 僕が君を振り向かせるのに必死だったこと

 わすれてはいないでしょうね?





 どれだけの年数をかけて君の気持ちを

 手に入れることができた?
 
 



 ・・・・・そして君は

 汚れてなんかいない」





淳一郎はそらの手を握りイスではなく床に膝をついて目線を合わせて言いきかせた。





「君がなにをした?

 



 明るくて、真面目で

 家族思いで
 




 こんな僕の介助を完璧にこなして

 

 こんな僕を幸せにできる君の

 どこにそんなものがありますか?


 それに、もし君が汚れていたとしても

 僕は一向にかまいません。

 僕が・・・・・」





淳一郎は顔を赤らめた



「・・ぼ、僕が


 何洗浄でも・・・、何除菌でも・・・

 浄化くらいしてやります」







そらは目をぱちくりさせ、




淳一郎にとっては嫌な間だったかもしれないが、


そらには、なんともキレイな透明な



空気が流れていた。






この男は酷くきれいな心をそらにぶつけてきたのだ。








「・・・・・へへへ」





そらはいつもの悪戯な笑いではなく、

まぶしい何かを見ているような

やさしく朗らかで どこか儚い

いたく満足げな笑みをこぼした。





ひとまわりも違う、できる医者に施術してもらえるのだ。






「“先生”・・・・・

       恐縮です」






まだ耳まで赤い淳一郎にそらは

その施術に同意した。