「やめるんだ!
・・・・・・そら!!」
手を抑えるだけではどうにもならなくなていた。
・・・私は、牧田夫人のように
なりたくない!!・・・・・
・・・母のように不道徳な人間にも!!・・・
「絶対いやだ!!
私は・・・
あんなみじめな人間になりたくない!!!」
そらは、足をばたつかせ上半身を激しくふった。
すると
「お願いだ!!そら!!」
淳一郎はそう叫び、
そらの華奢な体をやさしく、しっかりと包み込んだ。
「お願いだ!!!」
そらはこんなに激しい口調の淳一郎を見たことがなかった。
そして、自然とそらは淳一郎の体に腕をまわし
彼のいつもは頼りないだけの胸板を
今はしっかりと掴んで放さなかった。
「・・・・私・・・・
捨てられたくない・・・・・」
こんな薄っぺらい胸板に
こんな鎮静作用があったなんて
そらは知らなかった。
彼の仕事をした後の少し汗の匂いがする
白衣がこうしたのか、
それとも、
そらの耳にきこえてくる
彼の鼓動がこうしたのか・・・。
そらは淳一郎の胸の中でゆっくりと息をした。
淳一郎はそらが落ち着いたことに気がつき、
いつもの落ち着きのある声で話し始めた。