「・・・・・床?」






「そう。床です。

 この、どこの誰が糞便を踏んで歩いて

 いるかもしれない


 この床です」






「ちょっとちょっとちょっと!!

 本当に

 本当に、わからないですけど!


 


 淳一郎どうかしちゃったの!?

 なんかおかしいよ??」






そらは、困った顔で淳一郎を大きく揺さぶった。





が、彼はその手を払いのけて



すぐそばの壁に向い、肘をクッションに頭をつけ、もたれかかった。






そらは注意深く淳一郎を観察した。




どこか様子がおかしいのだ。
 (言動もだが・・・)





肩がひくひく動いている。






「・・・・・もしかして・・・・・



 ・・・・・・・・淳一郎?」





床にひと滴、ふた滴。






「ぼ・・・・・ぼくは・・・」







「こっちきて、淳一郎」







どうして泣いているかわからない。



わたしはそんなに悲しませることをしてしまったのか?




首を横に振る淳一郎にそらはもう一度言った。



「淳一郎!!

   こっち!」





パンパンッとイスを叩いた。





まるで、犬にしつけをしているようだと
そらは思ってしまった。


しぶしぶ淳一郎はもとの場所へ腰掛けた。


そしてとりあえずひと言こういった。



「まず

 一点・・・。


     僕は泣いていない」



そらは彼の目になみなみとたまっている物を見ていたが





「うん」




と眉を少しひそめ、うなずいた。