わざわざ用意された衣装を脱ぎ捨て、ランウェイの先にあるポールにゆっくり向かう。
頭をカラッポにしても踊りや仕草、首の傾げ方から指の動かし方まで…体に染み付いてる。
伏せた目を開く瞬間。
ボタンを外す指の動き。
下着に手をかける時に一瞬だけ魅せる躊躇いの顔色。
漏れる吐息。
それらの動作に沸く客席。
その歓声も拍手も紅潮した顔も……
私の目には何も映らない。
私の耳には何も聞えない。
…はずだった。
いつもならそのはずなのに、今まで何も映してなかった私の目が…
視界の片隅で、人の動く気配をとらえた。