しかし首を二往復ほど横に振り、出し惜しんでいた手段を使うことにした。



「明日の土曜日にはどっか連れてくよ、ちさとの好きなとこ」



頭のシェイクで、ちさとから外れかけた視線を戻す。


すると目に入ったのは、思わぬセリフに驚きながら、そこに喜び成分をたっぷりと注入した顔。



「ほんと?
ちさとの好きな所、連れてってくれるの?」


「ちゃんと今日お休みしてればね」



「する!!」と、ちさとは足元の布団を上に蹴っ飛ばして返事した。



「じゃあねぇ、お泊りがいいなぁ~~夜景が綺麗なとこ!」


思わず頭に控えめなチョップをかましてしまった。


いや、決して気が動転しているわけでなく、ノリで。

あくまでも、ノリで。



「それはちょっと…、ほら、お母さんたちも普通に家にいるし。
別の場所はないの?」


すると眉間に皺をよせ、口を尖らせていたちさとの頭に、例の電球が現れた。



「結婚式場見に行きたい!」


「なになに、なんだって?」


思わぬセリフに、老人のごとく腰を折り、耳に手を当て聞き返す。



「だからぁ、結婚式場~!
こないだ凄く素敵なとこ見つけたのー!
そーちゃんも、きっと気に入ってくれると思う♪」


そんな満面の笑みを向けられても。


というか、結婚すること前提ですか。


今日は顔面あたりの血液の循環が良いのは何でだろ。