「夜、……発作、起こさせちゃって」



母親の表情に深刻さが少しだけ刻まれるが、同時に怪訝さも増した。



「…ちさとちゃんの?」


他に誰がいるというのか。



とりあえず、母親の言葉に曖昧に返事をしながら、

物干し作業を終えた僕は、二階のちさとの部屋へと向かう。



そこは、ドアが1割5分ほど開いた状態。


その隙間から目が合う前に、ノックをする。


が、返事はない。



「…ちさと?入るよ」



そう断りを入れ、扉をぐっと押した瞬間。

硬質枕弾が飛んできた。



弾はドアという防壁に進路妨害され、ぶつかる直前に僕の足元に落ちる。


咄嗟にノブごと身を引かなかったら、顔面にクリティカルヒットを食らうところだった。




天真爛漫な姫は大変ご立腹な様子だ。



ベッドの上に上体を起こして座っていて、

頬を膨らまし、こちらを上目遣いで睨み、目尻にはうるうると涙を溜めている。