「っわ…!」
「…っと……」
漫画のはいった袋が軽く前の男性の足にぶつかる。
ついでに背中に私の顔が当り、けどそれ以上被害がないよう私は足に力をいれて踏みとどまる。…うわーこの体勢かなり変。
「ご…ごめん、なさい」
「いや、いい。―大丈夫?」
「あ、…はい。ご迷惑かけて、すみません」
体勢を整え私はぺこりと頭を下げる。
お釣りを受け取った男性は気にするなと首を振り、寧ろ女子高生に視線を向ける。
「…少しの考え事くらい君にもあるだろ?」
大人気ない。
目線で冷たくそういうと、男性は私をレジの前に立たせた。
「余所見してたら駄目だ、…気をつけるんだ」
「…は、い」
うわぁ恥ずかしい。
中2にもなって何してんの私。
頬が赤くなりながら私は頭を下げて彼を伺うように上目遣い気味に見た。
――…あ…永久先生の、連載のヒロインの相手の人みたい。
黒フレームの眼鏡から覗く、綺麗な濡れた夜の色の瞳。
さらりとした短い茶髪。
高い身長とすらりとした体付。
シンプルな服装なのに妙にオシャレに感じる着こなし―。
…漫画、みたい。
…でも、この人の購入した品、って。
……どうして、エロ本なの……。
―まるで漫画みたいな出会い。
ただ少し漫画と違ったのは、あの人の購入した品。
そして私が、ヒロインみたいに特別に素敵じゃなかったってこと。
でも、あの時私は本気でときめいた。
これって、何かの運命?
…これが私が、恋に恋して、彼に気付かされることになった、出会いの話―。