家から歩いて10分。
馴染みのお店へ入れば、私が向かうのは少女漫画のおいてあるコーナー。
最近創刊されたばかりの「L*R」という少女漫画雑誌でみるみる人気No.1に上り詰めた「小谷 永久先生」。L*Rでは「永久子」なんてあだ名で呼ばれ、ファンには「永久様」なんて面白げに呼ぶ人まで居る。不思議に何故かこの先生には「信者」なんてものはつかないらしい。

長い間人気のある人は、固定する信者や否定のアンチなどが湧き出てネットでも中傷などがヒートアップしたりするのだけど、この先生は出始めたばかりだからか、それとも運がいいのか―幸か不幸かそういった類が一切ない。

あるのは「突然現れた天才」やら「何故今まで有名雑誌に投稿しなかったのか」なんて話くらい。

永久先生はL*Rの特別創刊企画で新人作家を募集し、それに応募―。見事TOP賞であるプラチナティアラに輝き、即連載決定、デビュー作&連載が一気に同時に掲載されたなんていう人だ。

この先生の作品は、小さい頃から私が憧れる物語を紡いでいる。
私もそうだと漠然とだけど今だ「思う」、ヒロインは必ず幸せになれるという魔法がかけられていて、何もかもがありふれているのにとても特別で。

ああきっと私もそうよ!…なんてどこかで期待させられるのだ。

L*Rの創刊から一年。
次々出されるコミックはどの先生のものも人気により即完売状態。
魔性の何かがあるこの雑誌、そして先生。私はとても惹かれ、高揚感を感じながら今日も発売されたばかりの20xx-Act.01を手に取った。

「ん、表紙…永久先生だ。…あ、連載と一緒に読みきり描いてるんだ、楽しみ」

にやりとする頬を隠すことなく私はひっそり笑うと、永久先生と好きな先生のコミックに手を伸ばし3冊ほど手に入れると会計を済ませる。