「えと…なんか、自分もこういうことがあるって思えるような感じになります。私にもきっとヒロインと同じことが起こるって、」
「……ふーん」
その瞬間、答えた私に興味がなくなったのか、彼は私から視線を外してしまった。
…何か気に障ったのだろうか。
「…まあ………のも……には必要か……」
「………は?」
「いや、なんでもない。突然悪かった、…じゃあな」
ひらりと手を翳してエロ本のはいったコンビニ袋さげて歩いていく男性。
…ああ、やっぱその本はとてもじゃないですが貴方には似合いません…。
「…つか一体なんだったの?」
ときめきはいつのまにか収まり、ただ私には彼の後姿だけが、いつまでも少し寂しく脳裏に残った。
…どきどきしたあの人。
もう多分、どこかで次に出会ったとしても、私は覚えていたとしても彼は忘れているに違いない。
とてもそれが残念で、私は一時のときめきを抱けたことに感謝するしか、なかった。