盟はその言葉に言い知れぬ恐怖を感じた。
もしかしたら車椅子に座っていたのは自分かもしれなかった。


(そう在るべきだったのかも知れない)


そして、組織にまだ居るはずの母にはどんな副作用が起こっているのだろうか――?
 盟の心には、暗い影が落ちた。



 イオはパンドラの膝の上の手をそっと包み込むと、慈しむ様に言葉を紡いだ。


「パンドラ、解る?」


 イオの言葉にパンドラは頷いて見せた。穏やかな表情で界を見る。


「まり……、なのか?」


 パンドラ、いや、まりは何度も強く頷く。その目元に皺が寄り、綺麗な涙が溢れて流れた。
 それが流れ落ちる前に、界は力一杯まりを抱きしめていた。


「……ごめん。まり、ごめんな……!」


 会ったら言いたい事が沢山あった。が、

 界はそれ以上は言葉に出来ずわぁわぁと泣いた。まりも副作用で上手く出なくなった声で嗚咽を漏らしていた。

 14年、引き裂かれていた本当の兄妹はやっと再び会う事が出来たのだ。