興信所には界、盟、透、泉の4人だけであった。

 急遽、イオが伯方 まりを興信所に連れて来る事になったので、それを見張る為に礼二と詠乃が付いて行った。

 界は自分も行くと申し出たが、イオが頑なにそれだけは拒否した。結果、この4人で興信所で待つ形となったのである。


 時刻はとっくにお昼を回っていたが、とても何か食する心持ちでは無かった。


「なんであんな事言ったんだ」


 界が盟に言う。盟は眼鏡を机に置き、纏めていた髪を解いた。


「この日の為に今日までやって来たんじゃないの?」

「お前をあんな男に差し出す様な真似は間違ってる」

「でもまりさんは! 私の代わりに捕らわれてる様なものじゃない! 私の父のせいで……っ!!」

「だからってお前が犠牲になる筋合いねーだろ! 俺はまりかお前かを選ぶ事は出来ない!」



ダン!!


 その音の正体は、今まで大人しくしていた泉が、机を両手で叩いた音だった。隣りにいた透も、音にビクッっと反応して泉を見る。
 界と盟は言い争っていた表情のまま泉を見たが、次第に顔の険しさが薄れていった。


「2人でケンカの前に、泉達に言う事あるんじゃないの?」