ガン!

 と界が机を叩いて乗り出した。


「ふざけんのもいい加減にしろ」

「ふざけてなんかない」


 イオも据わった目で睨み返す。


「3つ目の間違いはその『HEMLOCK』の製造に関わるよ。
まずメイ、君は伯方 栄太に人質として日本に連れていかれた訳じゃない」

「えっ!?」

「君は人質には成り得なかった……。
何故なら、君のお父さんは確かに紅龍會総帥だけど……お母さんが“妾”だったから」


 イオは申し訳なさそうに盟に告げた。

この男は本当に盟に心底惚れているらしい。盟を傷つけたくはないのだろう。
再びイオは界を見る。


「黒菱 界、『HEMLOCK』を考え、製造を始めたのは君のお父さんだ。
なら何故、君のお父さんはその研究を投げ出し、組織から逃亡したと思う?」


 それはさっき、自分の父親が『HEMLOCK』の産みの親と言われてから、界にとって疑問だった。

 なぜ父、栄太は『HEMLOCK』を作ったのか? その後何故、盟を連れ、日本に逃げたのか。


「俺も当時は子供だったけど、これは確かな筋からの話。君のお父さんは薬の脅威が自分の“娘”に向いて、初めて罪を意識したんだ」