「いるよ」
イオはサラッと答えて続けた。
「てか、やっと俺話してもいい番? なんか皆さんの話、当たってるようで微妙にハズれてて、ツッコミたくって仕方なかったよ」
「!?」
「間違いは3つあるよ」
「いいから! 早く言え!!」
と思わず命令したのは礼二だった。こんなに焦った礼二を見るのは詠乃でさえ初めてである。
「まずね、界のお父さんだけど、『HEMLOCK』の製造に関わってたなんてレベルじゃない。
伯方 栄太はかつて紅龍會の幹部で、神の名“アレス”の称号まで授かっていた紅龍會の薬品製造研究員のトップ。
『HEMLOCK』の理論を立ち上げ、製造の先駆けとなった天才科学者だったんだよ。
つまり『HEMLOCK』の産みの親だ!」
「な!」
界は打ちのめされた。自分の両親が関わったクスリのせいで、何の罪の無い人々が苦しんでいると思っていた。
しかし、関わっていたどころか、元凶そのものが自分の父親だったのだ。
「2つ目は、その『HEMLOCK』だけど、あれは麻薬ではない。毒薬なんだ」
毒薬――?
「どういう事だ!? 呈朝会の人間はアレを使用してたんだぞ? でも誰も死んでなんかいない」