詠乃は情報屋として、裏社会の知識は当然豊富である。
しかし『HEMLOCK』については生前の灰仁に調べて欲しいと頼まれたからであった。
 何故そんな事を? と詠乃は疑問だった。大方予想はしていたが、今日ついにその真相を知る事となるのだ。


「私の勝手な推測だけど、界くんのご両親は組織で『HEMLOCK』の製造に関わるお仕事をしていた。……違う?」


 思わず透と泉は「えっ!?」と小さく漏らした。イオは黙って界を見ている。

 界は短く息を吐き、「そうだ」と肯定した。あまりにも苦々しい表情を浮かべて。


「それも親父の捜査で割れた事だ。俺の両親はそこを裏切って逃げたから殺されたんだ」




 次々と繋がっていく界、盟、紅龍會、イオ、界の両親、本当の妹、そして『HEMLOCK』――。

 泉はごちゃついたキーワードを頭で整理して落ち着きたかった。

 しかし本当は頭では既に理解してしまっているのだ。界の過去も、盟の正体も。


「でも、一体どうして、界の両親は盟を連れて日本に逃げたんだ?」


 透の質問は最もだった。なぜ盟を連れていく必要があったのか?