「その後の事はさっき話した通りだ。俺は施設に行って、黒菱の養子になって、盟と再会した」


 興信所はしんとしていた。外から車が行き交う音が、やけに耳につく。

 礼二が界に静かに訊いた。


「つまりお前は、黒菱の養子に来てから、父の捜査で自分の両親の素性を知ったのか?」

「あぁ。紅龍會なんて組織の存在も、親父とお袋がその組織の人間だったって事も正直、ショックだった」

「お前の記憶にもない組織を、父はどうやって捜し出したと言うんだ?」

「俺は、黒菱の養子になって、初めて過去の中国で過ごした5年間の話を親父―――灰仁にした。夜逃げの船で盟と出会った事も。
親父はまず盟を捜す事から始め……」

「そして私は父に見つけられた。私の過去の話も合わさって、父は紅龍會にたどり着いてしまったの」


 盟が付け加えた。しっかりとした口調だが、その顔は疲れきっている。


「それで、お前達はどこまで知っているんだ? 妹さんは? 『HEMLOCK』はなんなんだ?」

「……」

「ちょっと礼二くん。一気に聞き過ぎよ」


 礼二の質問責めを詠乃が諫める。


「『HEMLOCK』は紅龍會が極秘に製造してる薬と記憶してるわ」