妹、まりはと言うと、謎の少女メイとすっかりうちとけ、彼女の黒い、少し天然パーマの髪をお団子にしたり、三つ編みにしたりと遊んでいた。


「日本にもう暫くで着くわよ。これからは日本の学校に行ってお勉強するのよ」


 母、加澄の言葉だった。
兄妹はその事には少なからず両親に怒りを抱いていた。
級友とサヨナラも言えず、いきなり新しい学校に行かされるなんて。


「ねぇ、お母さん? メイは日本語も知らないのにどうするの? これから一緒に暮らすの?」

「いいえ。メイは……、メイの行くべき所に連れていくの」


 そう聞いて、まりは少し残念そうにしていた。妹が出来た気分だったのだろう。


「日本に着いたら、今まで中国に居た事は誰にも言っちゃダメよ」

「えぇ!? なんで?」

「向こうで暮らしていた時の事は忘れるんだ。友達だけじゃない。先生にも、周りの大人にも。誰にも言うな。わかったな?」


 父が強い口調で界とまりに言った。2人とも昔から父には逆らえなかった。

 何時も家にいない父。久しぶりに会っても遊んだ記憶なんて無い。
父がどんな仕事をしているのかもよく知らない。