『どうか無事でいてね……』


 そう言った、ブラウンのショートカットの女性がしゃがんで、まりとメイの頭を撫でた。
 まりには何故撫でられたかも、英語で何と言われたのかも理解出来なかったが。


 その様子と、僅かな灯りのなかで映える女性のエメラルドグリーンの瞳が何となく界の印象に残った。


「さぁ、行くぞ」


 父に促され、伯方家と少女は例の船に乗る事になった。


「父さん、」


 およそ半年振りに見る父に、界は恐る恐る尋ねる。


「俺達これから何処行くの?」

 界、まり、加澄、栄太、メイは船の船底の方の部屋へ向かった。
途中、鉄の扉がしまる重い音が頭上でした。船の扉だろう。


「日本に帰る事になった」

「え? 今から!? そんなっ、急だよ!! 学校とか……」


 言葉の途中で栄太の手が界の頭に乗った。


「……界。大きくなったな」

「……?」


 その時船体が揺れた。船は動き出してしまった。








 船に乗り2日は経ったのだろうか。
この船には窓が無いので正確には判断出来ない。

 殺風景な部屋に閉じ込められ、界は自分が置かれている状況に不安とは別に嫌気を感じるようになってきた。