3学期になると、疲れているのか、愛は元気がなくなった。


相変わらず塾の前にオレの部屋で勉強していたけど、オレをいびることもあまりせず時折ため息をついていた。


愛いわく「お試し受験」――いわゆる「滑り止め」の前日。


愛は机に顔を伏せて眠っていた。


最近は塾から帰って来るのも遅く、寝るのが夜中近くになるらしい。


受験するやつらは、とても小学生とは思えないハードな生活を送っていたのだ。



ふと、愛の唇が動いて。


「……ごめ……な……さい」


閉じた目から涙がこぼれた。


涙――愛の、……涙。


見てはいけないものを見てしまったような気がした。