塾から帰って来ると、彼のお母さんがうちのお母さんと「お茶」していた。


2人は同じ歳だと判明したとたん意気投合し、それから毎日のようにどちらかの家で「お茶」していた。


「こんにちは」

「お帰りなさい。友達と遊んで来たの?」

「いえ。塾の春期講習に行ってたんです」

「ええっ、小学生なのに?!」

「正平くんは、塾、行かせないの?」


私のお母さんがおばさんに言って。


……「正平」って言うんだ。


その時、彼の名前を知った。


「うちの子は勉強嫌いで、塾に行くようなタイプじゃないから~」

「でも、この辺の子はみんな塾に行ってるわよ」

「そうなの? 前に住んでたところはのんびりしてて。

誰かと一緒なら少しは勉強するかもしれないけど、まだ友達もいないしね~。

あの子、春休みになってからまったく勉強してないのよ」


おばさんはため息をついて、クッキーを口に放り込んだ。


「私、一緒に勉強しましょうか?」


さらにクッキーに手を伸ばそうとするおばさんに、思わず、私は言っていた。