恐る恐る教室へ戻ると、ほとんどの人が帰り支度を済ませていた。
先生もいなかったので、ほっと胸を撫で下ろす。


「あ、雛」


席に近寄ると佳代さんに呼ばれる。
今朝のこともあって、顔を合わせづらいです…。


「どこ行ってたの?心配したよ。保健室にいたの?」

「ぁ、いえ、体調不良と言うわけでは………」


心配そうに私を覗き込む佳代さん。

「―――…鷹文と一緒だった?」

「っ」


クラスの賑わいが一気に遠くなった。
佳代さんの声や息遣いだけが耳に響いてくる。


「それとも、悲しくて泣いてたりした?」


小さな笑い声。
嘲笑うような笑み。