「ところであんたは?新顔ね。」


ビールを片手にノリを指差す
眉間に皺を寄せた響子さん。
ノリもそこではっとして
自己紹介してないことに気付く。
紹介する隙なんてなかったけど。


「すいません。俺は「お袋、こいつが話してた時生の弟のノリだ。」


ノリを遮ったあきちゃんの言葉に
響子さんは少し目を見開くけど
直ぐに穏やかな慈しむような
母親の表情になった。



「…そう。あんたがね。ここにはいつまでいても構わないよ。何もかも落ち着くまでいな。本当の家だと思えばいい。私も子供は男2人に女1人が理想だったからね。」


響子さんの言葉に
ちょっとくすぐったくなる。

『響子さん、それじゃ私娘じゃん。』

「しのちゃんは娘みたいなもんさ。」

豪快に笑う響子さんは
本当に素敵だ。
お母さんがいるから
お母さん。とは思わないけど
とても頼りになるお姉さんって感じ。



「最後に一つ。紀生は紀生。誰にも代わりは出来ないんだ。たった1人のあんただよ。大切にしな。」


さっきとは打って変わって
真剣な面持ちの響子さん。
あきちゃんもノリを見て響子さんと
同じ表情。
いつもふざけた顔した克己さんまで
天井を神妙な面持ちで睨んでいた。