あきちゃんが
私の顔色を見て
耳打ちしてきた。


「詩紀の家のことはノリには言ってない。ばれないように俺も上手くやるし。それにノリは知ったとしても…」

「何してんだ、旭早く開けろよ。」


克己さん、空気読んで。



あきちゃんも、はいはい
って呆れながらも鍵を開ける。


結局、最後の言葉までは
聞けなかった。

知ったとしても
ノリはなんなの?

気になったけど
もう2人は先に中へと
行ってしまった。


訳も解らず立っている私に
大きな掌が向かっていた。


「なんか急に悪いな。これから、よろしく、詩紀。」


初めて呼ばれた名前と
入ろう。と導く掌に触れたとき
不安の糸がほどけた気がした…。