「明日も…来ていい…?」ナツ
は木にもたれかかった。

『うん。でも約束して。
お互いの顔見ないって』

メモ用紙に書かれた約束……

ナツは頷き、反対側にいる春維
に笑いかけた。

『友達記念』春維が言い、何か
が飛んできた。

それはネックレスで、男の子が
ギターを抱えていた。

『呼び捨てでいい』そう言った。

「ありがと…春維」小さな声で
ナツは言い、自転車のロックを
外し、振り向かず、走り出した。

後ろから春維の口笛が微かに
聞こえた気がした。

ナツの気配が消えたのを察し,
春維はため息をついて背中を
木にもたれかけさせた。

そしてギターを抱え、暗い夜の
空を見上げた。

「春維様、お迎えに……」春維
の執事が現れた。

『僕,駄目だね』手話で春維は
ため息混じりに力無く言った。

「春維様…先程のお嬢様は……
ナツ様なのですか?」執事の
木崎は尋ねた。

『うん。ナツは覚えていない
だろうけどね』そう言う春維の
手にはマイクを握った女の子の
ネックレスがあった。