「麻紀、これから付き合ってほしいトコあんだけど…」
ホールやショップの掃除も終わり、
バイトの皆が帰り仕度を始めて、
私も、エプロンを外し、
家の方へ向かおうかとした時だった
「これから…?」
「あぁ、おじさんには、麻紀を借りるって言っといたから…」
お父さんの方を見ると、目が合ったが、
表情は普通だった
何も、私に言わないってコトは、
大丈夫みたいだ…
「わかった…じゃぁ、着替えてくるから
お店の前で待ってて、」
部屋に戻り、
簡単にお化粧を直して、
着替えて、
お店の前に戻った
だけど…
坂口くんの姿が見当たらない…
「どこ…言ったのかな…?」
すると、
「麻紀っ」
お店駐車場の方から、
車に乗った坂口くんが、
窓から顔を出してる
「え?…」
車…?
ゆっくりと私の前まで車が近付き、止まった
「坂口くん、車、持ってたの?」
スカイブルーのコンパクトカー
「あぁ、この前、中古車屋で、
探してたのが入ったって連絡あって、
即効、買ったんだ
まだ、ローン残ってっけど…」
「ローン…って、
自分で買ったんだ…
すごいね…」
通ってる大学の子は、
わりと裕福な子たちが多く、
車で通学してる子の大半は、
親に買ってもらった、ってゆう子がほとんどなのに…
「坂口くん…
すごいよ…」
目の前のコンパクトカーを
隅々まで、見ようと
車の周りを1周した
「あんまし、見ないでほしーな
中古だし…
そんなことより、
麻紀、早く乗って!」
助手席のドアを運転席から開け、
私を乗るように促した