「あ、じゃぁ、オーナー
俺も下さいよ~」
「なんだ、お前も欲しかったのか?
欲しいなら、早く言えよ」
冷たく言い放つオーナー
だけど、
私の方を向き、ニカッと笑った
「ちぇっ、オーナー性格わるっ!」
はははっ、
と、坂口くんのおでこを突いて
オーナーは、坂口くんの分のキッシュと
アメリカンコーヒーを
用意した
「ね、坂口くん、コレ…
キッシュ…
気を使ってくれて、
オーナーさんに言ってくれたんでしょ?」
そう、
お店のカウンター横の
ショーケースには、
素朴で、手作り感たっぷりの
ケーキたちが鎮座していたの
私は、見逃してないから…
私が、ケーキがニガ手なの、
知ってるんだもんね?
「え? いや、そんなんじゃ、ナイ…けど…」
カウンターの側に置いてあった
アメリカンテイストの雑貨やグッズが載った雑誌を
眺めていた坂口くんが
視線をそのままに答えた
「あ、そうだ、
先輩、俺に、
何か聞きたいコトあるんじゃないすか?」
雑誌を閉じて、
肩を並べて座っていた坂口くんが、
90度向きを変え、
私の方を向いた
「あ、えっと、その…あのねっ…」
その時、
お店のドアが開き、
そちらに視線を向けると…
私が、
イチバン
会いたくて
堪らなかったヒトが
入ってきた…