思っていたより、ジイさんは、フランクな人で、
食事も、会話も思いのほか進んだ。
本当は、母さんと父さんに想いを遂げさせてやりたかったと、寂しい顔を何度もした。
ずっと、俺たちのことを心配してくれていたのが垣間見えた。
父さんは、1年前ガンとわかり、その時はすでに手遅れの状態だったそうだ。
父さんが死ぬ間際、ジイさんは、内密で
母さんを父さんに会わせた。
ちゃんと、母さんのこと見捨てずにいてくれたんだ、ジイさん・・・
「あの、それで、友永さんが言っていた、跡継ぎがどうの、って話・・・・」
ジイさんの表情が少し曇った。
何かを考えているかのように、視線を落としてる。
「陽介くんにとっては、突然すぎて、実感が沸かないかと思うんだが・・・・」
言葉を発するのを少し躊躇しているかのよう・・・・
「私としては、繁之が亡くなってしまったからには、君にしか頼るものがいないんだ。
繁之の子供たちは娘二人、繁之の兄妹も姉と妹、2人とも嫁に行ってしまってる。
私は、家業は血の繋がりある男子に継がせたいんだ。
どうしても、それは譲れんのだよ。
もちろん、今すぐにとは言わない、将来的な話だ。
気を悪くするかもしれんが、君のことは、調べさせてもらったんだ。
この春から、あの製菓大学へ行くんだろう?
卑怯なことを言うが、
大学の学費の一切を援助するから、ウチの会社の勉強もしてみる気はないかい?」
確かに、確かに突然すぎて、頭の整理がつかない・・・・
でも、学費を援助してもらえるのは、すごく有難い。
学費に加え、教材費、モロモロ、金がかかるのは目に見えている。
麻紀んちのバイトも、これまでより入れる日数が少なくなる。
でも、跡継ぎ・・・・その言葉が、重く圧し掛かる。