エレベータに乗り込み、


そいつが、最上階のボタンを押す。


急上昇したエレベーターは、ボーっとする間もなく、目的の階に付いた。


エレベーターから一歩足を踏み入れると、


踏んだ経験もないほどの、柔らかな感触の絨毯。


歩く音もしない。


歩く壁に目をやれば、重厚そうな扉が、2つ3つあるだけ。


真ん中の深い茶色の扉を、そいつが、ノックし、扉を開けた。


「失礼します。」


そいつの後に続き、俺もこの部屋に足を踏み入れた。


目の前に飛び込んできたのは、


大きなガラスの向こうの水平線と、埋め立てられた土地を結ぶ、大きな橋。


この部屋からは、余分なモノが、それ以外一切見えない。


なんか、スゲェ眺めだ。


「奥田陽介さんを、お連れしました」


そいつの声で、眺めに気をとられていた自分の意識を戻す。


黒皮の選ばれた人物しか座れそうにない椅子の背が、クルリとこちらを向き、


それに座っていた人物が立ち上がり、俺の方へ近づいて来た。


白髪まじりの髪、
顔のところどころは深い皴が刻まれているが、
それが返って威厳を感じさせて、
でも、俺を見る瞳は、細くて優しい。


「は、はじめまして、奥田陽介です」


細い瞳が、よけいに細くなるほど、優しい瞳を俺に向けた。


「よく、来たね。 あんな小さな赤ん坊が、こんなに大きくなって・・・・」


俺の肩や腕をポンポンと軽く叩く。


な、なんか、イメージと違うな・・・調子狂いそうだ・・・