「じゃぁ、母さん、行ってきます」
迎えに来た黒ぶちメガネ野郎が、アパートの外で、
黒の高級セダンの後部座席のドアの前で立っていた。
母さんと視線を合わせてから、すぐにそちらに向かった。
「どうぞ、」
後部座席のドアを開け、俺を促し、乗り込むのを確認し、ドアを閉めた。
そして、そいつは、助手席に乗り込み、
運転手は静かにセダンを発進させた。
相変わらず、表情がナイ、いけ好かないヤツだ。
車内でも、言葉一つ交わさず、息が詰まりそうだった。
30分くらい走っただろうか、
ひときわ目立つ、円形のタワーのような建物の地下へと、車が滑り込んだ。
奥へと進んだそこに、地下の玄関と思われる場所に車が横付けされた。
すぐさま、黒ぶちメガネが助手席を降り、後部座席のドアを開けた。
「こちらです」
メガネの奥の瞳が、付いて来いと言わんばかりの表情だ。
やっぱり、コイツ、気に食わねぇ。