来店したお客さんは、


いかにも、うちのお店には似つかわしくない程、


皺のないスーツに、黒ぶちのメガネ、


髪は、ジェルか何かで整えられていて、手には小さめのアタッシュケース。


歳は、30代前半くらい?だろうか?


「いらっしゃいませ、お決まりになりましたらお知らせくださいね」


営業用のスマイルと声で、対応した。


「失礼ですが、こちらに、奥田陽介さんという方はいらっしゃいますか?」


一瞬返事に困り、首を傾げると、


「私、こうゆうものですが・・・」


彼は、胸元のポケットから名刺入れを取り出し、


そこから一枚抜いて、私に差し出した。


見ると、


誰でも知ってる大手製菓会社の名前とその人の名前が書いてあった。


なんだろう、こんな大会社の人が、陽介に何の用事だろう・・・


「少々、お待ちいただけますか?」