あれから1年数ヶ月後…
“春”


出会いと別れの季節。



突然知らされた転校の話。





「俺は,前から亀中で空手するって言ってたじゃないか」
と奏太がふてくされたように母の恵美子にいう。

「あっちの方が人数多いんだから。部活も色々と強いし,別に空手だったら個人競技だし,どこでもいいじゃん。」
「団体戦わ?亀岡には長田先生がいるだよ」

無言になる母。

「でた!自分がやばくなったらシカトの術。お前はその辺の政治家かっつーの」

「うるさいねぇあんたも。口じゃなく手を動かせ」

話しそらすな!とか愚痴を言いながら自分の荷物が入ったダンボールを運び出す。

正直仕方ない事だってわかっている。

『ONE PIECE』と赤のマジックで書かれたダンボールを開け,新しい部屋に置いた今まで使ってきた本棚に並べ始める。

「結局,色々言っても仕方ないじゃん。」

妹の瑠衣がプリンを食べながら部屋に入ってきた。

「勝手に入んなよ。おれの部屋だぞ!」ととっさにドアを閉めた。

「ただワンピースを読みに来ただけだ」
とドアの向こう側で叫んでいる

「いや意味わかんねーし汗。てか荷物を運べ!何でプリン食べてワンピースを読みにくるんだよ」


「えっ!なんでって,お兄ちゃんが全部してくれないの?」

「しねーよ!ぜってーしねー!!荷物ぐらい自分で運べ」

「荷物運んだら腕と足と頭や首がつりそう」

「何が『つりそう』だよ!この前だって全部俺が…」
「大丈夫だって!」
「何が?!大丈夫なのはおれが筋肉痛になる保証?」

「口ばっかり動かしてないで手動かす!」

結局,毎度のこと自分のだけではなく瑠衣や他のことまでさせられるはめになる。


最後の一箱が運び終わり一段落いた。



これから始まる中学校生活に不安が少しあるものも,それに勝る奏太何か感じさせた。