小5のときの帰り道。

学校が終わり,昨日買ってもらった新作ゲームを楽しみに,全力疾走。ときどき,早足を繰り返しながら家に向かった。


奏太の頭のなかは,今日する予定の
ゲームのシュミレーションばかりが流れている。










“カラン”




突然中学校のフェンス越しから聞こえた,鉄の音…


ふと見ると,運動場の真ん中に
高跳び用の赤いマット。
マットの上には
陸上のユニホームを着た
女の人が1人寝転がっていた。





学校から決められている通学路は,
小学生の足で40分かかるが,
中学校の敷地内を横切れば
20分でたどり着ける。






「走り高跳び……」





中学生は落とした高跳びのバーを直して,
助走の位置に走っていく。



「おぉ!学校出てまだ10分しかたってねぇよ」


中学校の中庭にある時計を見た。

自分でもびっくりするほど,
早くついていた。


「この前の体育の高跳びのとき,
どのくらい跳んだっけな。
135?140か?」

と,つい自分と人を比べ
いつも優越感に浸ってしまう。




さすがに中学生と言えど,その辺の女の子には,負けないだろうと

心の中で少なからず,
バカにしていた。




「おねがいしまぁ〜すっ!!!」

彼女の声が辺り一面に響く。







「へぁ?!?!」

奏太は,見たものを疑った。