「80円のおつりでございます。」
・・・ヒヤリ。
差し出された手のひらにおつりを置くとき、
再び触れた彼の手は、やはりとても冷たかった。
よく考えてみれば、お金は受け取り皿に入れてやり取りするけれど、
彼は手を差し出したので、私もそれに応じていた。
店内は暖房が利いているので暖かくなっていた私の手に
彼の手の冷たさは、変に印象的だった。
その冷たさに思わず、彼の顔を見ると、
綺麗な顔をした男子高校生だった。
今考えれば、私はその冷たさに
惹かれてしまったのかもしれない。
寒い冬の日に、肉まんで手を温めながら帰る彼の背中を
私の目は無意識に追ってしまっていた。