窓際にあったリンゴを手に取り、皮を剥いた。

ひろみの為に剥いているはずなのに、貴はリンゴを次々に口へと運ぶ。

「なんで小児科?」

私はこの短時間でリンゴ剥きの達人になった気分。

「主治医が小児科の先生だからさ」

へぇ――貴の口から声が洩れた。

「質問終わり?」

「うん、終わり」

病気とか病院の話になると、ひろみは極端に嫌な顔をするから――とか前に貴が言っていた。

私は別に、ひろみに嫌な顔させる為に来てる訳じゃない。

だから彼女にとって嫌だと思われる話は、サラッとだけ聞いてすぐ流す。

「なんだぁ〜、」

「他になんか聞いて欲しいの?卓人は来てる?」

「来てくれるんだけど、いっつも喧嘩だよ〜!最悪…!」

「でもさ、喧嘩するほど仲が良いってゆーし…」と私はつけくわえた。

ひろみはジト目で貴と私を見る。

「こないだなんて、俺に興味のある看護師いっぱい居るからさとか言い出したんだよ?」

「俺わかるわ、その気持ち」

ならその看護師さんとラブラブしなよと私は腕を組んでむっつりふくれた。

「やだ」

私をよそにひろみは、「やだって子供みた〜い」と伏し目がちに言った。