一時間ぐらい歩いたとき、貴は急に立ち止まった。
目の前に、道端で泣いている小さな子供を見つけ近寄る。
「お前、迷子?」
貴はその子の目線まで屈んでから訊ねた。
「違う!ママ、飴買ってくれないからここにいるの!」
横を見ると、フルーツ飴の屋台でおじさんが威勢よく客引きをしていた。
色んなフルーツがキラキラ光る。
「よしっ!買ってやる!」
「え…」
貴は屋台に向かうといちご飴を二本買って、その子に一本、私に一本ずつくれた。
「どーも…」
私を横目に、貴はいつの間にか買ったらしい綿飴を腰に刺して子供の前にまた屈んだ。
「んまい?」
「うん!お兄ちゃん、ありがとう」
近寄った私に、貴は顔を上げて微笑むと、無言で立ち上がりまた歩き出した。
キッチリ掴まれた手首は、力強くてキツくて少し痛かった―
気付くと、私はただひたすらぼーっとしてた。
なんなんだ、これ。
貴の顔が頭から離れない。
「ひろみ、何か言ってた?」
「いや、私は何も聞いてない」
「入院、来週からだって」
私は無性に虚しい気持ちになって、顔を両手で覆い伏せたまま貴の顔を見ることができなかった。
目の前に、道端で泣いている小さな子供を見つけ近寄る。
「お前、迷子?」
貴はその子の目線まで屈んでから訊ねた。
「違う!ママ、飴買ってくれないからここにいるの!」
横を見ると、フルーツ飴の屋台でおじさんが威勢よく客引きをしていた。
色んなフルーツがキラキラ光る。
「よしっ!買ってやる!」
「え…」
貴は屋台に向かうといちご飴を二本買って、その子に一本、私に一本ずつくれた。
「どーも…」
私を横目に、貴はいつの間にか買ったらしい綿飴を腰に刺して子供の前にまた屈んだ。
「んまい?」
「うん!お兄ちゃん、ありがとう」
近寄った私に、貴は顔を上げて微笑むと、無言で立ち上がりまた歩き出した。
キッチリ掴まれた手首は、力強くてキツくて少し痛かった―
気付くと、私はただひたすらぼーっとしてた。
なんなんだ、これ。
貴の顔が頭から離れない。
「ひろみ、何か言ってた?」
「いや、私は何も聞いてない」
「入院、来週からだって」
私は無性に虚しい気持ちになって、顔を両手で覆い伏せたまま貴の顔を見ることができなかった。