ミヒャンがミーティングルームに戻ると、

「あっ、ドヨンさん。今から撮影始めますので、メイクと控え室で衣装に着替えて下さい」
と、スタイリストが言った。

ミヒャンは、IT企業で働くキャリアウーマンの役なので、黒いスーツに、レースの付いたシャツに着替えた。

撮影場は、実際に使用されている職場を使うことになった。

「5、4、3、2、1、スタンバイ」

「課長、データの転送が終了しました」

「ご苦労。我が社の売り上げが君のお陰で伸びているよ」

「いえ、私のお陰だなんて...この部署の社員一同ががん...プフフフフ」

と、ミヒャンは、1人のデスクに向かう男性に目を止めて、笑ってしまった。

「はい、カット〜」

「ドヨンさん、どうした?笑うだなんて珍しいね」
と、監督が言った。

「すみません」
と、ミヒャンは、頭を下げて言った。

ミヒャンは、トイレでぶつかった男性がデスクに座っていて、笑ってしまったのだ。


撮影が終わると、ミヒャンは、
「ねぇ、あの方何ていうのかしら?」
と、指を指して、マネージャーに尋ねた。

「さあ?ドヨンさんが、異性を気になるだなんて珍しいですね」
と、マネージャーは、苦笑して言った。

あの男性は、確かに変なのだ。