「何で?」

「亜悟くんが一番分かってると思う。私じゃ亜悟くんを幸せにはできないから」

最後に顔だけ見ようと思って顔を上げると、亜悟くんは眉間に皺を寄せて辛そうな顔をしていた。

どうして?

愛理香ちゃんと付き合うために邪魔な私からの別れなのに。

「嫌だ・・・。そんなこと言わないでくれ。オレはあげはが好きなんだ」

何て言ったの?

亜悟くんが私を好きって言った。

「うそだよ。最後までうそつかないで」

「嘘じゃない。オレはあげはが好きだ。だから付き合ってたんだよ」

「愛理香ちゃんのこと好きって言ったじゃん」

「愛理香のことは好きだった。愛理香以上に好きなやつはいないって思ってた。でもお前はそれでも傍にいてくれた。オレはお前に救われたんだ」

「何それ。別に私じゃなくても良いじゃん。傍にいてくれれば誰でも良かったんじゃない。私はあなたのお母さんじゃない」

亜悟くんに対して初めて大きい声を出してしまった。

「あげはじゃないとダメなんだ」

腕を引かれて抱きしめられた。