「雪花ちゃん、聡くん」

「あ、茜せんせー」


何かを話し合っている二人の後ろで立ち止まって呼び掛けると、特にびっくりするでもなくゆっくりと二人は同時に振り向いた。

茜のことを呼んだのは雪花だが、聡はというと興味なさげに黙って茜を横目で見ている。

二人の落ち着ききった曇りひとつない横目が、なに?と言っているようだ。


し、視線が色々キツイよ…


茜は内心冷や汗だらけだが極力表情に出さないように努力する。


普段から動物園みたいに賑やかな園内では珍しく、非常に落ち着いている二人。
二人とも外で遊んだりと活発なところはあるが、口数もそこまで多くない上にその一つ一つの言動がとても子供のものとは思えないことが多々あるのだ。


気が抜けない…


「えーと…二人ともお外見ながら何してるのかな?今はみんなとお昼寝する時間だよー?」

小さな二人に視線を合わせ、頑張って作った精一杯のひきつった笑顔で言ってみる。


「知ってるよ」

「見ればわかります」

「せんせーだってあたしが聡としゃべってることくらい見ればわかるだろ」

雪花はきょとんとしながら、聡は窓の外に目を戻しながら言った。

「いや、わかるけどね、うん。な、何をそんなに一生懸命話してたんだい?」

段々笑顔でいるのが苦しくなってくる。


「なんで人って戦争するのかなって」

「救いを求める人々のためにあるはずの宗教同士でなぜ争うのか、罪のない人々を余計苦しめるだけでしかないのに理解に苦しむ、という話です」



・・・・・。



「そ、それは確かに大切なことかもしれないけどね、雪花ちゃんと聡くんもみんなと一緒にお昼寝しなくっちゃ!」

二人の悪びれるわけでもなく反抗するわけでもない態度、そして話題のシビアさに何故か冷や汗と頬の痙攣が止まらない茜。


「いや、必要ないし」

そんな茜に大きな瞳をくりっと向けて雪花は言い切った。


可愛い…、じゃなくてっ!

「で、でも今はお昼寝の時間だよ?成長期には寝ることも重要だし、こういう時はやっぱりみんなと一緒のことしなくちゃ「それは、」

なんとか二人を寝かせようと必死になる茜の言葉を遮る聡。

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