ざわつく店内に流れる、BGM。
私好みの曲だった。


「あなた、良い声ね。」


「え?」


「ライブに何度も足を運ばせて貰って、確信したわ。」


「どういう…ことですか?」


「申し遅れたけど」


彼女は某有名ブランドの鞄の中から名刺を差し出した。


「私、とあるレコード会社の新人開発部の者です。」



目の前にある、小さな四角い紙。

その中には、
『波多野 友里』という名前と
電話番号


そして、有名なレコード会社の名前。


「これって…


「そう。あなたをスカウトしたいと思っているの。
唐突すぎて、驚いたわよね。


私とよく足を運んでるのは、
ここの社長よ。」


「社長…?」


「すぐに答えを出して欲しいとは言わない。
でも、あそこのコーヒーショップで歌うだけじゃ、あなたもったいないわ。」