「聞いて…くれるんですか?」
「もちろん。」
「じゃあ、頑張らなきゃ…」
聞いてくれる。
完成したら、聞いてくれる。
そう思っただけで、
胸の内から沸き上がる温かい気持ち。
背中を押された気がした。
「…ねぇ、」
「はい。」
「もし、だよ?」
「…はい。」
「もし、今日は帰らないて言ったら…どうする?」
固まる。
何を言いだしたのか、わけがわからず
取り敢えず目を合わせるしかなかった。
真剣な、眼差し。
息がつまる。
言葉が、出ない。
その表情が、
微笑みで崩された。
「なんて、冗談。」
そろそろ、帰らないと。
「明日も仕事でしょう。」
立ち上がり、
上着を羽織る。
待って、そんなのズルい。